13人目:ひとり旅仲間K ⑥さよならディナー
水曜の夕方、Kと解散した後
私は、諸事情により急遽予定より早めの帰国を決め、金曜の朝バルセロナをはなれることにした。
楽しかったバルセロナもあと一日か。
とっても楽しいから、帰りたくない。あと一週間くらいいても良いかも。
Kが移住したいというのも分かる。魅力的な街だ。
帰国を決めた直後に、すでに後悔していた。Kにメッセージを送る。
(急だけど、金曜の朝に日本に帰国することにした。だから明日が会えるの最後だね。)
初対面の時は、Kのことを夜遊び好きなとんでもない飲んだくれ男だと思っていたけれど、その後何度も一緒に遊びに行く 友人になるとは。
木曜は、バルセロナの街で過ごす実質最後の一日。
早起きして、グエル公園、カサ・バトリョ、グエル邸、カテドラル、ブケリア市場、マンゴーで服を買って、観光客らしく楽しんだ。
カサ・バトリョのチケットは、入場ゲート前でオンライン購入を試みたが、なぜかクレジットカードが受け付けられなかった。スタッフに説明すると、オンライン価格で窓口購入することができた。
ん?でもこれって、オンライン購入より安いぞ。おかしい。
と思ったら、なぜか学割になってた(笑)
窓口のお兄さんが勝手に学割にしていた模様。
でも窓口のお兄さん、私に何も聞いてない…。いい加減だな。
学生ですか、って聞かれていたら当然「NO」って伝えている。学生証持ってないし。
アジア人は若く見られますからね…。まあ、ラッキーとするか。
普段日本で仕事をしていると、童顔で実年齢よりも下に見られることはとても不利だと感じる。
後輩と同席して打ち合わせに出ていても、お客さんと会っても、私のほうが職位が下で決定権を持っていない、とみられることが多いため。
カサ・バトリョやグエル邸のミュージアムショップはセンスのいい小物が多くて
たくさん買ってしまった。
ノート、メガネケース、ポーチ、マグネット。
19:30ちょうどに、Kとピカソ美術館で待ち合わせた。
Kは、いつもTシャツにジーンズといったカジュアルな装いだが、今夜はシャツにジャケットでパリッとしていた。美術館だからかな。
4日間会って、だんだん彼の人柄が分かってきた。
人と一緒にいるときも気にせず友人や家族からの電話に出て話しこむこと、
Kが多く飲んでも必ず割り勘にすること、
自分の写真をかっこよく撮ってくれ、と何十枚も私に写真を撮らせること、
私は少しつかれてきていた…。
自転車の後ろに乗せてくれたこと、ゆったりとした旅の楽しみ方を教えてくれた
のは感謝しているけれども。
Kはピカソのこともよく知らないようだった。
出身地のマラガのこと、ラス・メニーナス作品群のこと、青の時代の作品のこと。
私の知っている限り、解説してあげた。
美術館のあと、La Bombetaというレストランにディナーに連れて行ってくれた。
先週、Kが友人と一緒に来てとても気に入ったらしい。
確かにどれも美味しかった!
ムール貝蒸しのトマトソースで味付けしたもの
アーティチョークの揚げ物
デザートのクレマ・カタラナ
何種類も料理を頼んだけれど、
一口大に切ったじゃがいもを素揚げし、マヨネーズやトマトケチャップ、カイエンヌペッパーなどのスパイスなどをまぜた「ブラバソース」をかけた「ブラバス」が私のお気に入りだった。
K「なつこって、Eat Pray Drink の主人公みたいだよね。」
なつこ「なにそれ?」
K「女性がひとり旅するアメリカ映画、知らない?アメリカ人女性が夫と離婚して、自分探しの旅に出るの。バルセロナ行って食べて、インドで瞑想して、そのあとアジアのどこかの国行って何かする話。」
なつこ「ああ、ジュリア・ロバーツ主演の Eat Pray Love ね。ちなみに彼女の旅先はイタリア、インド、バリだから。っていうか、わたし離婚どころか未婚なんですけど。
Eat Pray Drinkって(笑) なんやねん、それ。」
笑った。Kのこういうところ面白くて好き。わざとでしょ。
邦題:食べて、祈って、恋をして
恵まれた主人公に都合がいいことづくしの、ツッコミどころ満載の旅映画だ。
(あくまで私の主観です。人によって好き嫌いが分かれそう。)
もとは実体験を小説にしたものがベストセラーになって映画化されたらしい。
ビデオオンデマンドで二回ほど見たことがある。
お気に入りではないが、二回も見たのは今回私の旅はローマから始まったから。気分を高めるために出国直前に観ていた。旅先を魅力的に描いているという点では、観る価値がある。
私の今回の旅には祈りも恋愛もなかったけれど、真似して名付けるなら Eat Drink Sunshine って感じかな。と、ふと考えてみる。
地中海沿い南欧諸国の美味しいもの好きに食べて、いろんな人と飲みに行って、
太陽を楽しんだもの。あー、楽しかったな。
この記録を書いてのちに書籍化されてベストセラーになって、映画化されないかしら。
イタリア・フランス・スペインで、いろんな男と飲んで。殿方はどうにかしてワンナイトスタンド狙ってくるんだけれど、それをやんわりとかわす、鉄のパンツをはいた女の話。需要あるかな?
なーんて、あほなことを考えてみる。
なつこ「このあと友達と会うんでしょ。時間は大丈夫?」
K「全然気にしなくて大丈夫。夜中からでも合流するよ。」
なつこ「いろいろ、ありがとうね。特に自転車の後ろのせて街を走り回ったのは楽しかった。私、足短いからレンタサイクルはこわくてできないし。ひとりじゃできない経験だったよ。」
K「そうだよね、なつこは足短いよね。(笑)」
Kらしい返し。
お会計(もちろんきっちり割り勘)して店を出て、タクシーに乗り込む。
K「気をつけて帰国してね。またね。」
なつこ「ありがとう。また、世界のどこかで会おう。」
タクシー車内で、ハグしてお別れ。Kは先におりて友達のもとへと向かった。
ホテルのルーフトップバーをはしごして一緒に飲んだのもいい思い出だな。結局、今週土曜の午後にカタルーニャ美術館には一緒に行けなかったな。
なんて考えながら、タクシーはホテルに着いた。
旅の出会いに感謝。バルセロナはまた来たいな。